稲田塾のこと第6弾となります。
稲田塾の強さの秘密の一つは保護者会にありますね。三者懇談会は一人一人の個別懇談なのですが、保護者会は集団で行うものです。基本的にはクラス単位で親子で先生の話を聞いてもらう会なのです。入試情報や教育情報、塾の方針や考え方、勉強に対する取り組みやその方法など、あらゆることを発信していくのです。一年に2回~3回行われ、学年主任がメインとなり、その校舎の校舎長やたまに本部の幹部や社長や、稲田勝人塾長もゲストスピーカーとして話をするのです。塾長先生が来るときは保護者は大喜びで先生は大緊張でした。先生は保護者会が終わってから相当厳しく指導されますからね。私も保護者会のデビュー会で塾長が来ており、こっぴどく叱られました。(笑)ありがたかったですけど。
さて、よほどのことがない限り、社員の先生はこの保護者会で話をしなければなりません。経験があろうがなかろうがお構いなしなのです。塾長の考え方としては「一所懸命に教えていれば、生徒にも親にも言いたいことがあるはずだ」というものです。ですから、多少話が下手でも親の目を見てしっかり喋ればいいという指導でした。なるほど、それはそうなんですよ。教育というのは生徒に授業をするだけでは成立しません。親にも理解してもらい協力してもらわないと高いレベルの教育はできないのですよね。そういう考えの下、保護者会を大切してしたのですよ。しかし、若い先生には荷が重いのです。本当にプレッシャーなんですよ。5分でも大変なのに約50分程度の話をしなければならないのですから。そうれはもう、必死で研究しましたね。ネタの集め方、話し方やネタの組み方、先輩の保護者会を見学してそれをまねしたり、参考にしたり…そして何度も練習して、ベテランになれば若手のその練習にも付き合ったり…相当な時間とエネルギーを注いでましたね。そして、更に高みを目指して塾内でスピーチコンテストも毎週のように開いてましたね。お題は自由でスピーチをして全社員に評価をしてもらうのです。保護者の前とは異なる緊張感があり、厳しかったですね、内部のコンテストですからベテランの方がプレッシャーが大きかったのですよ。そこそこ経験してきて偉そうなことを言ってるのに話が下手だと示しがつかないですからね。(笑)
ここまでは苦労話ですから凄いこともなんでもないのですが、この結果どの先生も話が上手だったのですよ。しゃべり方そのものが上手な先生、話のネタが卓越している先生、情熱がすさまじく熱い喋りの先生、データや資料の活用が上手い先生、もちろん全部できる先生もいたのですが、いろいろなタイプの話が上手な先生がいましたね。たとえ、塾内で話が下手と言われても、世間的にはまあまあ上手い方でしたからね。私も20代の頃はだいぶと下手でしたが生徒も保護者も上手いと言ってくれてましたからね。
当然ですが、話が上手というのはたいへん大事なことで、伝えたいことが確実に伝わるということなのです。考えや方針がきっちりと伝わらなければアンバランスな指導になり、ロスや無駄を生み出してしまいますからね。ですから、この話の上手い先生が多いというのは塾の強みなのです。もちろん、話の上手さは授業にも活かされますから、たいへん大切な土台となっていたのでしょう。
ところで、こんなに保護者会をする塾も若手にしゃべらせる塾もほとんどないと思います。もちろんこれは文化の問題ですが、保護者の前できっちりと話ができるというのは当たり前のことではなく、大手塾でも保護者会でしっかりとしゃべれるのは校長くらいのものなのですよ。私は今も保護者会をしています。つい、2日前にやりました。人前でしゃべるスキルを持っているなら使わないともったいないですし、保護者会でものを伝えることに魅力も感じますから今後も続けていきたいと思っています。
ちなみに、稲田勝人塾長先生の話は凄かったですね。とにかく圧倒的なんですよ。上手いなどという陳腐な言葉では済まないレベルです。プレゼンスが半端ないですからね。あの方を真似することはできません。
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