TETSU JUKU

塾業界や教育業界の問題に迫ります。

アリのアドバイスは適切か…

 ネットで英語の音読教材を探していたらイソップ寓話のサイト見つけた。いろいろな物語があるんだけど、どれもこれも正論ばかりの秀作で、大人が生徒たちに言いたいことはほぼ言ってくれているので素晴らしい。というわけで名作中の名作である「アリとキリギリス」を授業で使おうと思ってじっくりと読んでみた。ご存知の通り、日ごろから真面目にコツコツと働くことを是とする素晴らしいお話で、努力をしない遊び人のキリギリスが悲惨な人生をたどるというもの。確かにその通りでこの物語に異を挟む余地などないはずなのだが、久しぶりに読んでみるとどうもしっくりこない。アリのアドバイスは正論だが、つまらない。本当につまらない。夢がないのだ。夏の暑い日に真面目に働いて、寒い冬は余裕で暮らすことは確かにそうなのだが、それだけである。ずっとこの生活が続くのだ。子供目線からすると、「なんてつまらないんだ」としか思わないだろう。ある程度の大人は人生経験があるからアリの主張は理解できるし、コツコツの重要性を身をもって分かっている者も多い。夢を失った大人の視点からは見事にマッチする物語である。夢を持たない大人の価値観を押し付けるには十分な物語だ。でも、この物語だけを子供たちに伝えて真面目にやらせようというのは大人のエゴだし、つまらない大人の典型的なやり方だと思う。そう、これがつまらない大人だ。つまらない大人の教育を受けた子供は詰まらい大人になり、悲劇は繰り返される。これではいけない。アリのアドバイスはもちろん必要だが、根本的にやる気につながる話を与えないといけない。

 

 さて、この物語でもう一つ気になることがある。アリとキリギリスは全く違う。偏差値で言えば30~40くらいは違うかもしれない。人生観も根本的に違うはずだ。働きもののアリに遊び人のキリギリス。同じアリどうしならサボり気味のアリに対してこのアドバイスは意味を持つだろう。しかし、まったく違う価値観の者にこのアドバイスは通用するわけがない。住んでいる世界が違いすぎるんだから。この観点からしてアリのアドバイスはあまりにも的を外している。遊び人には遊び人に対するアドバイスがあったはずだ、更生を促すならもっと緩やかにアドバイスをする必要があっただろう。エリートの勉強方法を落ちこぼれに要求するような的外れ感があるのは否定できない。物語を何度も読み返し、そんな思いがこみ上げてきた。人はそれぞれである。共通部分も多いが異なる点も多い。よって、指導やアドバイスは対象によって異なるはずだ。我々大人や教育に従事する者はそのあたりを十分に心得た上で子供接しなければならない。十把ひとからげに同じ指導を全員にしてはいけないないのである。

 そんな基本的なことを改めて考える機会を与えてくれたことに感謝したい。

 

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