TETSU JUKU

塾業界や教育業界の問題に迫ります。

生徒を変える授業

 随分と前のこと、TETSU塾を開く前に体験授業を開いた。無名の塾なのに割と各学年割と集まってもらって盛況だった。いろんな生徒がやって来た。転塾を考えている生徒、塾が初めての生徒、成績の良い生徒も悪い生徒もいた。その中に相当やんちゃ坊主の顔つきの生徒もいた。目つきは鋭く攻撃的な雰囲気を持っていた。どうやら親に行けと言われたのだろう。勉強など今までほぼ経験していないという雰囲気をが感じられた。どんな姿勢で授業を受けるのか心配だったのだが、その心配はすぐに消えた。必死で授業を受けているのだ。「おお、やるな」と思い嬉しくなった。1時間程度の体験授業はあっという間に終わった。するとそのやんちゃ坊主の顔つきがなんと優しい顔に変っていた。授業前の鋭い目つきは失せ、穏やかな顔つきになっていた。授業後に懇談を予定したので、終わったタイミングでお母さんが来られた、すぐに「あんた、なんて顔してんの?」と言ったくらい変わっていたのだ。その変化は言うまでもなく私の授業によるものだ。私の授業を受けて何かを感じたのだろう。そして、どうやら観念したようだ。「この人に弟子入りする」そんな決意が顔つきを変えさせたのだろう。圧倒的な人の前にはひれ伏すしかない。抗うことも反発することも意味をなさない。自分を晒して従うのが賢明だ。そういう態度に見えた。

 もちろん、彼は入塾した。今までしたことがないくらいの量の勉強をして、見事に志望校に合格した。必死で頑張ってはいるがたいへん苦労していた。分からない問題を見て機嫌が悪くなることもあった。でも、文句を一言も言わずに指示に従い必死でついてきた。卒業するとき「俺は変わった」と言ったのが印象的だった。

 ちなみに、体験授業は評判がよく全員が入ってくれた。翌日体験授業を受けた生徒の母から電話があって、興奮気味に話しておられた。相当授業が気に入ったようだった。私がやった授業は普通の授業である。標準的な授業だ。体験授業だからと言ってよそ行きの授業ではない。普段やる授業をやっただけ。それが、あれほどまでに評価されたのだから、彼らが普段受けている授業は本当にわかりにくい詰まらい授業なんだろうと思った。

 手前味噌だが、生徒の態度を変えてしまう授業はすばらしいと思う。授業の力は計り知れない。でも、そんなに上手くいくときばかりではない。

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