TETSU JUKU

塾業界や教育業界の問題に迫ります。

草枕を読みながらいろいろ考えた

あまりにも有名な夏目漱石の「草枕」の冒頭部分です。

これを読んでいるといろいろと思いますね。

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山路を登りながら、こう考えた。
 に働けばかどが立つ。じょうさおさせば流される。意地をとおせば窮屈きゅうくつだ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさがこうじると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいとさとった時、詩が生れて、が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りょうどなりにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
 越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容くつろげて、つかの命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命がくだる。あらゆる芸術の士は人の世を長閑のどかにし、人の心を豊かにするがゆえたっとい。
 住みにくき世から、住みにくきわずらいを引き抜いて、ありがたい世界をまのあたりに写すのが詩である、である。あるは音楽と彫刻である。こまかにえば写さないでもよい。ただまのあたりに見れば、そこに詩も生き、歌もく。

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 智に働けばかどが立つ。じょうさおさせば流される。意地をとおせば窮屈きゅうくつだ。とかくに人の世は住みにくい。

 この部分が特に有名ですから多くの人が知っていることだと思います。また、「草枕」を知らなくてもこの部分だけが独り歩きをしてしまっている感じがありますので、やはり有名でしょう。この部分はもちろん大事な一節なのですが、大切なのはこれに続く部分ですよね。芸術と芸術家の尊さを説いているのですよね。こういうことは、なんとなくわかっていることなんですが、大人になってからようやく深くわかるんですよね。そして、芸術の大切さや尊さを改めて知るわけですよね。すると音楽も絵もまた鑑賞の仕方に深みがでて素晴らしいものはいくらでも味わうことができるわけですよ。

 しかし、できれば、この観点は子供のころから分からせておきたいのですよ。でも、音楽や美術を教える先生にこの観点はあるのでしょうか。また、生徒にしっかりと芸術の意味を教えることができるのでしょうか。少なくとも、私の出会った先生には、この芸術の尊さを語れる人はいなかったのですよ。英語の先生は英語の大事さを語ってましたし、数学の先生も数学の重要性を語ってました。しかし、音楽の先生も美術の先生もその教科の大切ささえ一言も語っていないかったのですよ。他の人にも尋ねましたが残念ながらそんな美術や音楽の先生はほぼおられないようですね。教育がダメなのはこういうところも含めてですよね。実際に音楽や美術の先生が肩身を狭くしている可能性もあるかもしれませんしね。日本は豊かなはずですが、こういうところに空洞化している現実を見ることができます。

 

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