TETSU JUKU

塾業界や教育業界の問題に迫ります。

参考書は現在完了の「経験」の説明が雑すぎる

意外に雑な説明の参考書

 高校生が使う文法書はいろいろなものが出ていますが、どれもこれもよく似ています。本の大きさも内容も本当によく似ていますよ。これは問題集などの教材にも言えることですが、違いを見極めるのはたいへん難しいのです。どれにするかは見た目の好みでしょうね。イラストや色使いが自分の好みにあっているかどうかですよね。しかし、学校が決めたものを買わされるのが一般的でしょうけどね。

 さて、この文法書は昔と比べるとかなり進歩しています。だいぶとわかりやすくなった気がしますね。例文も平易なものが多くなっていますし、それほど堅苦しい内容ではありません。高校生はこういう文法書をしっかりと読んで理解を深める必要があるのです。こういう参考書を読めるということは先生の授業を理解する力もあるということにつながりますからね。

 しかし、わかりやすいはずの文法書も完璧ではありません。正直なところわかりにくいところも、お茶を濁したような説明の部分もあります。これでは生徒も納得できないでしょうね。まあ、言語ですから説明がつかないこともあるのですが...(この「言語ですから…」といのは逃げでよく使いますね。)

 

 問題は現在完了の説明なのです。以前にも書きましたが現在完了の説明がどうもしっくりこない参考書ばかりなのですよね。とくに「経験」の部分です。

 

Vssion Quest(啓林館)の説明

 「(今までに)~したことがある」という現在までの経験を表す。

説明はこれだけですよ。そしてイラストと次の例文が書かれているのです。

 I met Judy's brother.

   I have met Judy's brother twice.

これでわかる生徒は天才ですよ。イラストがあるのでわかった気にさせられるパターンですね。

 

総合英語be(いいずな書店)の説明

 I have met him before.

    「彼と会ったことがある」という経験を表すために現在完了形を使っている。完了したことを経験として持っている、ということ。before(以前に)を使うことで、これまでの経験を伝えることが明確になっている。

 

 説明は増えましたけど、なんかごまかした感じがあります。結局、過去形との違いが不明瞭なのですよ。I met him.と過去形で書いた場合とはどう違うのかの説明がないのです。確かに過去形は過去の事実ですが、生徒の目では過去の事実と経験がどう違うのかがわからないのですよ。「過去形に経験は含まれないのか…」そんなふうに思うのです。ですから、そこに言及がない限り中途半端な感じが否めないのです。

 

経験の意味は

 そこで、「経験」という言葉を国語辞典で調べてみると次のように書かれています。

自分で実際に見たり聞いたり行ったりすること。

また、それによって得た知識や技能。

                       明鏡国語辞典第二版(大修館書店)

 

なるほどですね。これではっきりしました。

経験とは「それによって得た知識や技能」ということです。

ですから、経験があるということは「知識・技能がある」という解釈になるわけですよ。だから、現在完了形の経験とは過去の経験によって変化した(知識技能を身につけた)自分がいるということを伝えているのですよ。過去形とは全然違うのです。この経験という言葉の意味が最初からちゃんと理解できていれば、参考書の適当な説明でもわかるのですが、経験の意味を完璧にわかっている生徒はそれほどいませんからね。まあ、ここまで説明するのは先生に仕事になるのでしょうが。

 

ということですから参考書を読むのはなかなか力の要ることなのですが、高校生はしっかりと読まないといけません。

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