TETSU JUKU

塾業界や教育業界の問題に迫ります。

昔の参考書

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 以前に、ブックオフで見つけたのが、この「たのしい英文法」という参考書である。かなり古いもので、初版は1975年、2002年に増補48刷となっている。知らなかったのだが2011年に改訂版が出ていた。

さて、この参考書はただものではないのである。

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「たのしい○○」というとどうも軽薄な印象を受ける。しかし、ページを開くと名前からうける印象とは違って、かなり気合の入った本格的な参考書であることがわかる。しかし、書き方が口語的でたいへんやさしく語られているので、読みやすくついつい引きこまれてしまう。読み進めていくと筆者の人柄も伝わってきて、そばで授業を受けているような感覚を感じるほどである。さらに驚くのは中学生用と書いているのに、高校で学習する文法内容(仮定法、関係副詞、分詞構文)まで書かれていることである。だから、中学生以上の人でも使えるし、この一冊で一通り学習できる。

 肝心の内容だが、最近の軽薄な参考書とは違い、曖昧なところをごまかさないできっちりちと切り込んである部分が好感を持てるし、例文なんかもユニークである。例えば、比較の単元では、以下のような例文がある。

The sun is bigger than the earth.

The earth is bigger than the moon.

The sun is the biggest of the three.

The moon is the smallest of the three.

 天体を使うのは珍しいが別に難しくはない。むしろ、大小関係が明らからだから、分かりやすかったりする。導入例文では「より背が低い」とか、「より年上」とかが一般的だが、実は混乱しやすいのである。

 

現在完了形の説明もなかなか気に入った。次のように書いていある。

I have seen a tiger once.(経験)

「ぼく、虎をみたことがあるんだぞ。」

この文は過去に虎を見たということを含みつつほんとうは、虎を見た経験がある立派なぼくなのだぞ、とそこが一番言いたいところなのです。つまり現在が中心のです。

 

普通の参考書は「過去の経験を現在で持っている」などと説明している物が多いが、何も説明しないでごまかしている物も多いのである。本当に現在完了形・経験と過去形の違いをズバッと書いてある参考書など見たことがないのである。

 

 最近の参考書は、きれい色遣いで、かっこいい名前や、やる気を扇動するような名前をつけたり、有名あ予備校の先生の名前が付いていたりするので、ついつい手に取ってしまうのだが、どの参考書も内容はそれほど変わらないし、薄っぺらく、本質には程遠いごまかしもある。テストの出題頻度の高いものにスポットを当ててはあるが、なんか物足りないのである。そういうものと比較すると「たのしい英文法」は地味だが、味わい深く価値ある一冊だと思う。しかし、英語をやり直ししたい人とか若手の先生が読むとより良いと思う。中学生でも読めるだろうが、一通り英語学習をした人の方がこの本の価値を理解できると思う。

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